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埋もれ木(小栗康平監督作品)

渋谷の映画館で小栗康平監督の「埋もれ木」見てまいりました。
やや、寝不足だったので、退屈して寝てしまったらという恐さもありましたが、予想と違い全く退屈しない作りで、心地よくもう少し長く見ていたい気になった映画でした。
映画館で小栗作品を鑑賞するのは「眠る男」についで二回目ですが、前回はずいぶん前のような気がします。今回の映画は「泥の河」や「死の棘」よりも「眠る男」に近い感があります。が、さらにストーリー性を排除しており、はっきりとした起承転結はありません。ストーリー性がないからつまらないのではないかと思われますが、ストーリー性がないからその場その場の台詞と映像を楽しむだけで特に考える必要がないので、観ていて非常に楽な映画です。そもそも、映画にはストーリーがあるのが当たり前という考えはおかしいと思います。ストーリー物が大半を治めているため、こういうストーリー性がない映画だと難しそうだという印象を与えがちですが、私としては逆にわかりやすいというか考える手間がないので、感じるだけでいい、観やすい映画だと思います。
舞台は鉄道が通らなくバスも廃線になった村というか町というか田舎が舞台です。そこに住む老若男女の日常を淡々と描写いたします。
空想と現実が混ぜ合わさって展開しますが、わからなくても関係ないと思います。感じればいいのだと。その分、映像はどのシーンとっても綺麗で印象に残ります。
その映像の心地よさや登場人物ののんびりとした立ち振る舞いが、いいなあと感じられればこの映画を楽しめます。
フェリー二の「81/2」「アマルコルド」「インテルビスタ」等を楽しめる人でしたら共通の空気が流れているのでお薦めです。
後半にタイトルの埋もれ木がでてきます。これは昔森林だったところが噴火の影響で立ったまま埋もれてしまった木の事をいいます。埋めていた土を取り払った地下の森は迫力あります。そしてそこから上昇する鯨の張りぼては幻想的で深みを感じます。また、トラックに描かれた鯨の絵が雨上がりの水溜りに映りあたかも浜に打ち上げられた鯨のように観える映像感覚のすばらしさ等々印象的なカットが数多くちりばめられており今までの小栗監督作品の中で一番楽しめる作りになっております。
多少貧乏でもこの映画に出てくる町に住みたいという気持ちになりました。
ずっと、この心地よい映像の世界に入っていたい。
ある意味理想郷が展開します。
そういう映画です。
私的にはとても気に入ったので、お薦め映画です。
by yururitositarou | 2005-07-19 01:19 | 映画
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