「柩の中の猫」 小池真理子著 新潮文庫

「柩(ひつぎ)の中の猫」読みました。
200ページ程で読みやすい文章なのですぐに読めます。

女の画家の先生の所にお手伝いに来ている女性が、薄汚れた迷い猫が庭にいるのを見つけます。
お手伝いさんは猫を見てかわいそうなので餌をあげますが、マンション暮らしの自分の部屋では飼えないし、先生に見つかったら怒られそうだし、と考えているところに先生が現れ見つかってしまいます。
怒られると思いきや先生は、体を綺麗にしてやったら、逃がしてやりなさいと優しい言葉をかけてくれます。
綺麗になった猫を先生の部屋に見せに連れていくと、先生、猫を見つめて「ララ」と呼びかけ抱きしめます。
猫を見て昔を思い出した先生はお手伝いさんに30年ぐらい前、当時先生が若かったころ体験した話をし始めます。
それを聞き終えたお手伝いさんは衝撃を受け、家に帰る前、先生の食事を用意し終えると台所で一人泣き崩れてしまいます。

ここまでがプロローグで後は先生が話した若い頃の話になります。はたしてどのような衝撃的な話なのでしょうか?

先生は画家になるための勉強をするため北海道から東京へ出てきます。
そこで友人の家族の伝で奥さんを早くに亡くした30歳ほどの美大の先生である男性と小さな女の子の二人暮しの家へ絵を教わる代わりに家庭教師兼子守をする条件で住み込みます。

女の子の唯一の友達で母親的な存在としてララという白い猫が飼われております。

始め女の子は若い頃の先生になつかなく猫と麦畠で遊んだりしてますが、あることがきっけけになり二人と一匹の猫は仲良くなります。

ある日、女の子は誰にも教えていない秘密の場所を教えてくれます。
麦畠のはずれにある朽ちた井戸です。
人が落ちないようにと柵があるものの柵も相当朽ちており人が乗ったら井戸の中に落ちてしまうのがわかるほどです。

いやな予感がします。

それからしばらく後、旦那さんが美しい女の人を連れてきます。
それが日に日に頻繁になってくるので、旦那さんに淡い恋心を抱いていた若い頃の先生は嫉妬心をひそかに抱きます。

女の子は女の子で旦那さんの恋人に全くなつきません。
その事で女の子と若い頃の先生そして猫のララの絆(きずな)はいっそう強くなり・・・

ある事件が起き、それによって更に悲惨な事が・・・

題名を見て、始め読もうかためらわれました。
猫に何か起こるのではと。
本や映画で人が悲惨な目にあうよりも動物が悲惨な目にあう方がかわいそうに感じることがよくあります。
不思議ですが、私はそうで、南極物語やハチ公物語なんて可哀想そうで見る気にもなりません。
しかし、家にあった本で手軽に読めそうなので読みました。

以前にもこの作者の本について何度か書いておりますが、この本も例に漏れず読みやすく特に後半は次はどうなるモード全開で一気に読めます。

猫は確かに題名から推測されるようになり、ああかわいそうにとやだやだと心が悲しみに満たされますが、次はどうなるかと感傷に浸りながらも読み進んでいきます。

すると最後にこれはもう救いようのない悲惨な事実が明かされます。

後半までは、これも前にこのブログで書いておりますが「悲しみよこんにちは」的な内容で、それだけでも悲惨なのですが、よくありがちとも捉えられます。しかし、描写が簡潔で上手いので読ませるし、更に最後にあっと言わせるような事があります。

救いがなさすぎる終わり方なのですが、読み終えた後、麦畠の美しい映像が懐かしい風景となっております。
そこで起こった話が悲惨であると共にすべてが懐かしいような思い出となり、なんともいえない感傷的な気持ちに浸れます。
内容は全然違いますが「スタンドバイミー」見た後のような「ノルウェイの森」読んだ後(出た当時読んだきりですが)のような。でも、これは本当に救われない話です。

どちらかというと女性向な感じですが、男が読んでも充分楽しめるというか、一気に読め、短いながらも濃い印象を与える作品であると思います。

この作家は今の所、はずれがありません。

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カバー装画 藤井敬子とあります。女性向のおしゃれな感じの絵です。
夜的イメージですが私の読後感は太陽輝く麦畠か雪のイメージが強いです。
というかこの絵はプロローグのイメージで椅子に座って昔の話をしている画家の先生のシーンを現しているのかなあと思いました。
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by yururitositarou | 2005-11-10 00:48 |
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