「水中都市・デンドロカカリヤ」安部公房著・新潮文庫

安部公房著作は以前、「砂の女」と「他人の顔」を読んでおりますが、もう10年以上前なのでうろ覚えですが、両方とも社会に対して疎外感を持っているような感じがして独特の世界です。

現実逃避にはうってつけです。それと妙に主人公に対してどこか突き放したような感情移入されていないようなそれでいて、作家の感情が充分反映されているような不思議な感覚を味わえます。理解できたのか理解できていないのかもわからないです。

で、今回は「R62号の発明」がテレビで紹介されていて、面白そうと思い読んでみようかと本屋に行ったらなかったので
「水中都市・デンドロカカリヤ」を購入しました。

短編集です。

幕開けは「デンドロカカリヤ」でこれは、コモン君がデンドロカカリヤになった話です。

コモン君って?

”コモン君はコモン君さ~要するにコモン君でありさえすればいいんだよ”と説明してくれます。
そのコモン君がデンドロカカリヤになった過程を友人が口語的に聞かせてくれます。

わけがわからないって、そうさ、それでもいいじゃない。

でも、コモン君の話はいい方さ。ちゃんとコモン君がデンドロカカリヤになる過程が描かれていてわかりやすいよ。

それ以外の話はもっとわけがわからないだろうね。

私的に一番わかりやすいというかインパクトあったのが「闖入者」でした。

主人公の部屋にいきなり3世代一家(4世代だったかな)が入り込んで自分達の家のごとく住み込んでしまい、主人公はいいように扱われて理不尽な世界が展開します。

外に助けを求めても誰も助けてくれません。
もう救いがない状態で、ラストは悲惨な終わり方をします。

現実にあったら恐いですが、私のベストフェーバリット映画の一つでもある「ドクトル・ジバゴ」にも同じような場面があったのを思い出しました。

ロシアでは社会主義になるにあたって、私有財産は許されなくなり大きな部屋に住んでいた主人公一家の部屋に他人がどやどやと入ってきていつの間にか住んでしまって主人公一家は片隅の一部屋だけが残された状態になってしまいます。

恐ろしい事です。

逆に大豪邸などに暮らしている人を見ると部屋の一部を分けろと言いたい気持ちも判るような気もしますが・・・やはり、あかの他人と住を共にするのは苦痛であると思います。

で、その他、「ノアの箱舟」は旧約聖書の有名な話は実は・・・という話。
これもけっこう面白いです。

「鉄砲屋」は平和な未開発の島が、鉄砲のセールスマンの出現で上手く騙され戦争に突入していく話。

表題の「水中都市」はわけわからないです。

これは理解しようと思ってもそう簡単に理解できそうもないと思いまして、作者独自の感覚世界のようであるのでその世界観を味わうという楽しみ方をすればいいかもしれないです。
たまには通常と違う世界を体験してみるのもいいかもです。

ここに収められている短編よりも「砂の女」と「他人の顔」の方がわかりやすく描かれてはいると思いますので、未読の方はそちらから読んだ方がいいかもしれないと思わされましたが、個性はこちらの方が強く出ているようです。

評価のしようがない内容の本であります。

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カバー装画 安部真知となっており調べてみたら安部真知氏は安部公房氏の奥さんでした。
この絵も小説同様独特です。
なんだか夫婦そろって異才で凄いな(ある意味カッコイイ)と感じております。
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by yururitositarou | 2005-12-27 02:11 |
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