またまた、東京の京橋にある東京国立近代美術館フィルムセンターで「シナリオ作家 新藤兼人」という特集上映を見にいきました。
今回の映画は、「しとやかな獣(けだもの)」です。 監督は「幕末太陽伝」で有名な川島雄三 この映画も有名ですが、初めて見ました。 1962年の作品です。 文春文庫編の洋・邦名画ベスト150中・上級篇という文庫の邦画11位に載っておりましたのでそのページを掲載しました。 父(伊藤雄之助)、母(山岡久乃)、長女(浜田ゆう子)、長男(川端愛光)の四人家族が住む団地の一室が舞台で、カメラはその部屋と部屋の前の階段から移動する事がほとんどありません。 例外として、屋上、隣の住人の部屋、引きでマンション群を映した映像がありますが、ほとんどマンションの部屋の中だけで展開します。 一室のみで展開する映画はヒッチコックの「ロープ」やシドニー・ルメットの「十二人の怒れる男」が有名ですが、不思議とこういう映画って面白い物が多いです。 この映画もそれにもれず面白いです。 昼間から昼間くらいの一日の出来事を描いており、この部屋の中に様々な癖のある人物が登場します。 俳優も伊藤雄之助、若尾文子、山岡久乃、小沢昭一、高松英郎、山茶花究(サザンカキュウ) ミヤコ蝶々など有名俳優多数出演で豪華です。だけれど癖のありそうな人ばかりです。 それも、四人家族を始めとして、いい人というのがほとんど登場しません。 それらの欲望の塊のような人々が騙しあい、責任のなすりあいなどをしながら、一室を出たり入ったりを繰り返します。 例外として「熱中時代」の校長先生、二時間ドラマの帝王のお父さん、船越英二扮する会計士がおりますが・・・この人物役としては人がよさそうで影の薄い役なのですが、最後に他の登場人物たちの人生を一変させてしまいます。 伊藤雄之助はじめ皆、ずるそうな演技上手いです。 でも、この映画ではやはり若尾文子です。 妖しくセクシャルな魅力をはなつ美しさはなんとも言えません。 映画の中で一番ずる賢い悪女役です。 好きな女優を何人か上げる時、若い頃の若尾文子をその中に入れますが、この映画を観て更にいいなぁと実感しました。 川島映画は垢抜けているので(「幕末太陽伝」と「風船」、「貸間あり」しか見ておりませんが・・・)今見てもスタイリッシュな演出、映像で、かっこいい感じがするし、新藤兼人もこんなブラックユーモアに満ちた脚本まで書けるんだと感心します。 窓から見える夕陽などの映像も美しいです。 毒々しく低俗なのに美しくてかっこいい映画です。
by yururitositarou
| 2006-04-15 03:15
| 映画
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