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じゅん君の桜

マイ・サイト広告です。
サイト内から短編一部抜粋しました。
児童文学です。
詳しくは左記murmur of shineに掲載してあります。

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春 がきたよ

あたたかい 春 だよ

春 がきたら、小とり たちの元気なおしゃべりが、きこえてきたよ

お花 がさいて、ちょうちょう があつまってきたよ

杉の かふん も なかよく とぶよ

ももがさいたら 桜もさくよ

桜の色は ももの色 でも、もも じゃなくて 桜だよ

桜は桜 さくら色

きれいなきれいな ピンク色

そして、じゅん君の おうちのそば にも桜がさいたよ

さいたさいた 桜がさいた



そんな春のお天気の日

じゅん君はおかあさんと桜を見にいきました。

じゅん君のおうちのそばの こうえんです。

「わぁい、さくらだ さくらだ きれいだな」

じゅん君はこうえんの大きな桜の木をみておおはしゃぎです。

桜の木のまわりをはしったり

おちてくる はなびら をおいかけたり

おおいそがしです。

おかあさんもそんなじゅん君をみてニコニコ顔。

そして、じゅん君は桜の木にだきついて上をみあげました。

あおいそらの中にきれいなピンク色の桜がひろがっています。

じゅん君はそこまでのぼってみたいとおもいました。

でも、じゅん君は小さいおとこのこですので、

のぼることができません。

しかし、おもいきって、ちかくにある桜のえだに とびつきました。


ボキッ!


あらたいへん、じゅん君の たいじゅう で桜の えだ がおれてしまいました。

じゅん君は なにがおきたかわからずに

おどろいていると

おかあさんが、あわててはしってきました。

「あらあら、じゅんちゃん だいじょうぶ?」

「うん だいじょうぶだけれど 桜がとれちゃった」

「まあ、かわいそうに じゅんちゃんの 

たのしいきもちもわかるけれど 桜さんもかわいそうね」

「桜さん いたいのかな?」

「いたいけれど がまんしてるわ」

「桜さんごめんなさい」

「この桜さんは じゅんちゃんの 生まれる前からここにいるの

そして じゅんちゃんを みまもってくれているの だから、おねえさんなのよ」

「えっ、おねえたん?」

「そう、おねえさん だから、じゅんちゃんも これからはやさしくしてね」

「うん、おねえたん ごめんなさい もうやりません だから、これからもあそんでね」

すると桜のおねえさんがやさしくわらってゆるしてくれた気がしました。


それからというもの じゅん君は 桜の木をおねえさんとおもって

まいにちみにいき その下であそんだり もたれかかっておひるねしたり

そして、ほんとうのおねえさんとおもって桜のことをだいじにしてあげました。


そんなある日の夕方です。

じゅん君が桜のおねえさんにあいにいくと

そのまわりにはサラリーマンのおじさんたちやおねえさんたちが

あつまってにぎやかにおはなししておりました。

じゅん君は桜のおねえさんのそばにいきたいけれど いけなくてさみしいきもちではなれたところでかくれてみておりました。

サラリーマンのおじさんたちやおねえさんたちはなにやら桜おねえさんの下でのんだりたべたりしているようです。

「はやく桜のおねえたんからはなれてくれないかな」

じゅん君はおちつかないきもちでようすを見つづけました。

しかし、いつになってもかえらないどころか

ますますにぎやかになっていきます。

そのうちひとりのおじさんはネクタイをあたまにまいて歌いながらくねくねとおどりだしました。

するとまたひとりのおじさんはたちあがって桜のおねえさんの前に立つとオシッコをしはじめました。

桜のおねえさんにオシッコをかけているのです。

「おねえたんになんてことを」

じゅん君は桜のおねえさんがひどいことをされているのを見てとびだしてたすけにいきたいとおもいました。

でも、おじさんやおねえさんたちはみんなこわい目をしていたので、なかなかでていくゆうきがわきません。

さらにおじさんのひとりが枝にとびついておってしまうと、おねえさんのひとりにわたしました。

おられた桜の枝をもらったおねえさんは耳とかみのけの間に枝をはさんで、はしゃいでおります。

それだけでもひどいのにまだまだつづきました。

ネクタイおじさんはいきなり口をおさえたかとおもうと口の中のものを桜のおねえさんにむかってはきだしてしまいました。

桜のおねえさんはさらにきたなくよごれていきます。

また、ひとりのおじさんはこうふんして桜のおねえさんをけったりなぐったりそれはひどいものです。

おねえさんたちものってきて、桜のおねえさんにくちべにでかおをかいてわらったりしております。

「おねえたん・・・」

かなしみのあまりじゅん君はきょうふもわすれてとびだしていきました。

「僕の桜ねえたんになにをするんだ!」

しかし、おじさんやおねえさんたちはとろんとした目でじゅん君をみるとゲラゲラとわらいだしました。

「ぼうやこんなにおそく であるいちゃいけないよ、さあ、こどもはかえったかえった」

ゲラゲラゲラ

ぶきみなわらいです。

じゅん君までもばかにされてしまいました。

それでも、じゅん君はゆうきをだしました。

桜のおねえさんのまえに立ってりょううでをひろげてなきながらいいました。

「おねえたんにちかよるなー」

なんといってもだいじなだいじな桜のおねえさんにこれいじょうひどいことをさせてたまるかというきもちがつよかったのです。

すると、おじさんやおねえさんたちはあきらめたのか、つまらなそうなひょうじょうをして、もんくをいいながら、かえりはじめました。

さいごのおじさんはかえりぎわ、桜のおねえさんに ぺっ、とつばをはきかけました。

じゅん君はりょうてをひろげながらりょうめからたいりょうのなみだをながしました。

おじさんたちがいなくなると 桜のおねえさんのほうをふりむいてみました。

桜のおねえさんはきたなくよごれ泣いているようにみえました。

じゅん君も泣いています。

しかし、桜のおねえさんをきれいにもどしてあげなければと、あしもとにいくつもおちているビールびんを手にもち こうえんのすいどうで水をくんでなんどもなんども桜ねえさんにかけてよごれをおとしてきれいにしてあげました。

しかし、けられたあとなどはきずとなってきえません。

そのとき、おかあさんとおとうさんがはしってきました。

「じゅんちゃーん」

「じゅーん」

「ママ、パパ」

じゅん君はおかあさん、おとうさんのもとにはしっていきました。

そして、だきつくといいました。

「ぼく、おじさんたちにひどいことされていた桜ねえたんをたすけたよ、でも、桜ねえたん、元気がないよー」

おかあさんはやさしくいいました。

「じゅんちゃん、えらいね、きっと桜ねえさん、じゅんちゃんにかんしゃしてるよ」

おとうさんもじゅん君のあたまをなでながらいいました。

「じゅん、おまえはえらいぞ、こんどはおとうさんもいっしょにまもってあげるから、なにかあったらよぶんだぞ」

そして、じゅん君とおかあさん、おとうさんは桜のおねえさんのところへいって、やさしくなでてあげました。

じゅん君がみあげると桜のおねえさんは月あかりにてらされて、きれいにやさしくほほえんでみえました。


しかし、よくじつ、じゅん君がおかあさんおとうさんといっしょに桜のおねえさんのところにいくとピンクの花はほとんどおちてしまって元気なくみえました。

よくじつ、そしてまた、よくじつと桜のおねえさんはげんきがなくなっていくようでした。

そして、きせつ がかわっていき 冬がおとずれると 桜のおねえさんはとうとうかれてしまいました。

もう、もとの うつくしさ にもどらなくなったのです。

じゅん君がはなしかけても、へんじがかえってこなくなったのです。

そして、桜のおねえさんはこうえんからいなくなることになりました。

じゅん君はなきながらおわかれしました。

しかし、じゅん君は桜のおねえさんのさいごの声がきこえたようなきがしました。

おかあさんの声かとおもいましたがよこにいるおかあさんは、口をもぐもぐうごかしているけれど閉じたままなので、やはり桜おねえさんの声だとおもいました。

「じゅん君、いままでありがとう。もう私はいなくなるけど、きっと生まれかわって、じゅん君のそばにあらわれるわ。そのときはじゅん君をしあわせにしてあげるから、まっていてね」

そして、桜のおねえさんはトラックにのせられてさっていきました。

「さようなら、おねえたん。ありがとう、おねえたん。おねえたん、おねえたん、おねえたん・・・」

じゅん君は さっていった桜のおねえさんのほうをみながら なみだをながしました。

すると横にいたおかあさんもなみだをながしながらいいました。

「じゅんちゃん。桜のおねえさんの声、おかあさんにもきこえたわ。きっときっともどってきてくれるよ。たのしみだねじゅんちゃん」

じゅん君は桜のおねえさんがさっていったかなしみでないておりましたが、

おかあさんにえがおをみせてうなずきました。


そして、しばらくするとあたらしい桜の木がうえられました。

じゅん君はおかあさんとおとうさんといっしょにみにいきました。

まだ小さな小さな桜の木です。

まだ、花はさいておりません。

「桜おねえちゃんがうまれかわってきてくれたんだ」

じゅん君は楽しくなり、この桜をだいじにみまもりました。


そして、なんにちかすぎたある春の日のことです。

じゅん君に いもうと ができたのです。

桜ではなくておかあさんからうまれた本当のいもうとです。

かわいいかわいい女の子です。

そして、おとうさんとおかあさんはこのいもうとに「桜」と名づけました。

じゅん君は桜おねえさんがいったことをおもいだしました。

「じゅん君、いままでありがとう。もう私はいなくなるけど、きっと生まれかわって、じゅん君のそばにあらわれるわ。そのときはじゅん君をしあわせにしてあげるから、まっていてね」

そう、きっと桜のおねえさんは「桜」として じゅん君の前に生まれかわってきてくれたのかもしれません。

そして、じゅん君はそんな「桜」をいもうととしてだいじにだいじにめんどうみました。

そのとき、こうえんではあたらしい桜の木が花をさかせ、ピンク色につつまれてしあわせそうにわらっておりました。
by yururitositarou | 2006-08-08 20:00 | サイト内小説
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