カテゴリ:本( 25 )

魚籃観音記 筒井康隆著(新潮社)

d0063706_19341183.jpgで、前回に引き続き先日読んだ筒井康隆作品です。

短編集です。

表題作は悪くはないのですが、それほど面白いと感じませんでした。

エロいのですが、どちらかと言うと笑える内容です。

しかし、これ以外にいい作品が多数収録されております。

「市街戦」は東京が戦場と化している中、犠牲者を出しながらもホームドラマを取り続ける撮影隊。

「馬」は社長からご褒美として馬をもらったけれどそれが、人間の若い女としか見えない主人公。

「作中の死」は近所の小説家が書く新聞連載小説に登場人物として描かれた電気屋の喜怒哀楽。

「ラトラス」は近未来SF。で、核戦争後のような世界の中、巨大化して知能を持ったねずみのような兄妹と生き残りの人間との攻防。

「分裂病による建築の諸相」は様々な変わった感覚の人物が立てた個人宅の例をあげ、笑わせます。

「建物の横の路地には」はまさに路地裏に行くとさわやか君から特殊なテレフォンカードをもらったり、色々な人から色々なものをもらえるよと教えてくれる話。

「虚に棲むひと」は自分が小説に取り上げた女性が様々な作家の作品にも登場し、そのつど落ちぶれていく話。

「ジャズ犬たち」は犬の世界の話で、人間を観察したり、集まってジャズコンサートをしたりと様々なタイプの犬が出てくる話。

「谷間の豪族」は一度入ったらそう簡単に出られないような場所にある妻の実家に住むようになった作家の話。

とバラエティーに富んだ内容なので、どれかお気に入りが見つけられるかもしれません。

私はどれもよかったですが「分裂病による建築の諸相」と「建物の横の路地には」が、面白く読めました。

表紙絵はしりあがり寿氏でかわいく味わいがあります。

そういえば、しりあがり寿氏が朝日新聞夕刊に掲載している地球防衛家のヒトビトという四コマ漫画で、先日傑作がありました。

先日ボクシングの亀田興毅の判定をめぐっての内容を扱ったものですが、これからの敵はもっと手がわい敵が待っている。

世間のバッシングだ。

と言う内容です。

まさにボクシングの対戦相手より手ごわそうです。

私、最近思うのですが、亀田のお兄さんは実はやさしく静かでいい人なのではないかと。

無理してマスコミやお父さんのためにああいうキャラクターを演じているのではと。

時折、表情にそれを感じられて憎みきれないのです。

亀田の柿の種のキャラは長男と次男に似てるような・・・
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by yururitositarou | 2006-08-08 18:02 |

フェッセンデンの宇宙(河出書房新社)

d0063706_19233742.jpg作者はエドモンド・ハミルトンで初めて読みました。

私のサイトのお客さんのGFC氏より、教えていただいたのですが、調べてみるとこの作者は、キャプテン・フューチャーシリーズの原作者。

で、本の内容は、「フェッセンデンの宇宙」「向こうはどんなところだい?」「翼を持つ男」「帰ってきた男」「追放者」「風の子供」「凶運の彗星」「太陽の炎」「夢見る者の世界」の九つのSF短編が収録されております。

表題作「フェッセンデンの宇宙」は実験で小宇宙を作ってしまった科学者の狂気がえがかれており、まさにSFの基礎であります。

小宇宙に発生したさまざまな星とそこに誕生したさまざまな生物。科学者はそれらを望遠鏡?で観察しながら、さまざまな実験をします。

目に見えないくらい小さな生命たちは実験によって色々と残酷な方法で滅ぼされていきます。

目に見えないくらい小さな世界の生命だから別にいいじゃないか、いや、その世界の住人は微生物よりも小さいが我々と同じ命あるものだから、実験するなんて残酷だ。

と考えてしまいますが、なんだか自分だったら興味本位で残酷な実験をしてしまいそうです。

読んでいて、これはハード・ドラえもんの味わいを感じました。

表題作とともに好きな「風の子供」などは、風の住む場所に迷い込んだ主人公がそこで風と話をできる少女と出会う話ですが、これなんかもドラえもんの台風のフー子を思い出します。

どの話も科学的には嘘ばっかりなのでしょうが、逆にそれが科学的に正しい内容のSFよりも夢とロマンを感じ、心が開放されるような気分を味わえました。


表紙の絵は、表題作「フェッセンデンの宇宙」に出てくる小宇宙の中の星のひとつの住人たちをイメージしているようです。

幸せそうに踊っておりますが、その後、彼らを襲う運命は・・・

これぞSFの基礎と言う短編がが濃縮されて、読みやすい内容ですのでお勧めです。

ドラえもんの愛読者で、たまには違うタッチのSFを読んでみたいと思っている方にも、本格的SFノベルを読んでいる方にも万人に受け入れられそうな内容です。

ただ、残念なのはその辺の書店で売っていないことです。

私はどこを探してもなかったので通販で購入しました。
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by yururitositarou | 2006-08-08 16:01 |

なんとなくクリスタル

「なんとなくクリスタル」田中康夫著 河出文庫

長野県に知人がいる関係で、長野県民が代表として選んだ長野県知事とはどういう人なのかを勉強するため、「なんとなくクリスタル」を読みました。
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県民必読の書かもしれないですね。長野県知事はこういう考えを持った人なのかと理解しやすい内容でした。

というのは、大げさで見当違いで半分嘘ですが、昔のベストセラーで未だに読んでない有名小説です。

しかし、これが不思議と本屋さんで見つけられないのです。
私は、たまたまブックオフで見つけて購入できました。

あれだけのベストセラー小説なのになんで本屋においてないのか?

多分、仕入れてもすぐに売切れてしまうか、単なる流行小説として受け取られて、流行は過ぎたので見向きもされなくなったのか・・・よくわかりません。

で、話は1980年のバブル期が舞台で、モデルでもある女子大生が主人公。
そんな彼女の東京でのオシャレな日常生活が淡々と時にはエッチに描かれております。

読んでいくうちに気分は80年代のオシャレでリッチな生活の気分に!

この本の面白いところはページを開いて右側が小説、左側が小説にでてくる店や音楽等々のオシャレなウンチクが満載された註釈が書かれております。
1980年の文化の勉強にもなりそうです。

更に河出文庫の著者あとがきでは下のような当時の著者のオシャレな写真付きです。
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いくらオシャレでも、今更20年以上も前の話を読んだって、流行遅れも甚だしいし、役立たないと言われればそれまでかもしれないですが、今よりも華やかな時代の雰囲気が感じられ、ある意味笑えるような感じもします。

小説としては、単なる流行小説で、一見中身が無いように感じられるのですが、主人公達のノー天気生活は幸せそうに見えてもなんとなく不安定で、はかなげな空気が漂っており、独特の感じを味わえます。逆に不景気な今だからこそ当時の空気を吸ってみるのも面白いかもしれません。

一見、軽くてドラマ性もなく、中身が薄いようですが、当時の空気をよく現しているようで、まさに「なんとなくクリスタル」という感覚を味わえるなかなか面白い体験でした。
しかし、ラストは悲しくは無いのですが、何故かはかなさと懐かしさという感情に支配され余韻が残りました。

なぜか忘れられない不思議な雰囲気の小説です。
個人的にはお気に入りです。
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by yururitositarou | 2006-06-06 04:01 |

女教皇ヨハンナ 思草社

「女教皇ヨハンナ」ドナ・W・クロス著 読みました。
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時は9世紀、実際にいたのかいなかったのか?女人禁制のバチカンのそれも教皇にまでなった女の人の話です。バチカンでは現在もタブーだとか・・・

歴史小説としても面白いし、普通の成功物語として読んでも面白いです。

「チャングムの誓い」じゃないですが、女の子の時代から次から次へと災難が襲ってきてはそれを乗り越えていく話なので、最後まで飽きずに読めます。

キリスト教の閉鎖的で古い因習に凝り固まった面が強調されて描かれております。

父親や司教等々表面は偉そうにしている嫌味な人々が沢山出てきます。

それら嫌味な人間の妨害を乗り越えて最後には教皇という頂点まで上り詰めます。

それも、最後まで一部の人を除いては彼女を女性ということは知らないで、男を装い隠し通します。

その分、教皇になる時点は読んでいて感動します。

主人公が女性なので歴史小説ですが、相手役としてカッコイイ男の騎士が出てきます。

最後までこの騎士はヨハンナを見守り助け、そして・・・

最後は悲惨です。それも女性であるがゆえにこのような悲惨な事に!

でも、これでよかったのではないかとも取れるような終わり方です。

悲しいけれど後味は悪くない。

過去にもこの女教皇ヨハンナは本や映画として描かれてきたそうですが、どちらかというといいイメージで描かれていないそうです。

それは、教皇位にある間というのに愛人の子を身籠ったという事かもしれませんが、これは確かにイメージ的によく描くという方が難しいかもしれません。

しかし、この本はそんなことも感じさせず主人公を応援し続け最後まで魅力ある女性として描ききっております。

娯楽小説として読んでも充分楽しめる内容で、あえて難点をつけるとすれば、作者が女性だからか、ヨハンナと彼女を見守る騎士ゲロルトとの恋模様がロマンチックすぎて宝塚の演劇を観ているようになってしまう点です。それはそれで悪くはなく、それも物語を面白くしている要素のひとつでもあるのですが、どうも読んでいてその点が妙に気になってしまいました。

それともうひとつの難点は単行本でそれも上下巻二冊で約4000円もかかってしまう点です。

全体的には、西暦800年代のヨーロッパの状況や暮らしぶりなどもわかりやすく描かれており、映画化になるだけあって娯楽面でも充分楽しめる内容です。
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by yururitositarou | 2006-04-09 03:15 |

99%の誘拐 講談社文庫

「99%の誘拐」岡嶋二人著 読みました。

d0063706_1521922.jpg恥ずかしながら、この文庫がすごい!2005年版第1位という帯広告につられて買ってしまいました。

でも、実際に書かれたのは1988年。

今から20年近く前です。

それが何で2005年度の文庫本のミステリー1位なのか・・・

真相はよくわかりませんが、広告戦略に上手くはまって衝動買い。

でも、岡嶋二人作品は「クラインの壷」「そして扉が閉ざされた 」「コンピュータの熱い罠 」と読みましたが、どれもはずれがなくそれもグイグイと読ませ落ちもしっかりとしているので、好きな作家の一人(二人?)でした。

この作家名は二人一組の作家名で、ミステリー界の藤子不二雄、日本のエラリー・クイーンといったところでしょうが、私は好きでも深く調べていないのでそれぞれがどういう特徴かという事までは知りません。

現在は解散したとのことですが、解散後のペンネームが知らないため、どちらがどう現在活躍しているかも知りません。

でも、岡嶋二人作品は他にもいろいろありますので今後も他作品読んでいこうと思います。

よって、まあ、広告につられたとしても、損はしないと確信は持っておりました。

その通り、読んでみてこの「99%の誘拐」もグイグイと最後まで読ませ最後はサスペンスにしては珍しく気持ちいい終わり方をいたします。

20年ほど前に起こった子供誘拐事件が冒頭その父親から息子への遺書として語られます。

息子は金塊と引き換えに助かりましたが、犯人は現在もわからずじまい。

そして、現在に再度子供誘拐事件が発生、その犯人は・・・

既に犯人はわかる展開で主人公は犯人です。

ここで面白いのは誘拐の仕方です。

犯人が直接子供をさらうのではなく、子供の方から犯人の罠に飛び込んでくる仕掛けです。

よくできております。

監禁場所にはコンピュータ一台いるのみです。

交渉もコンピュータが交渉。

犯人がパソコンで打ち込んだ文字が合成音として発せられ交渉します。

この本では読者は誘拐犯を応援します。

いかに上手くやり遂げるか、最後の現金受け渡し場面までグイグイと読ませます。

そして、読後はスカッとした後味のいい終わり方をする(言ってしまうと完全犯罪が成功してしまいます)ので、気持ちのいい話です。

よくできているので「この文庫がすごい!2005年版第1位」の2005年版という表記以外は納得できる仕上がりです。

ちなみに私の読んだ岡嶋二人本の4冊でベスト4を付けると

1位「クラインの壷」
2位「そして扉が閉ざされた 」
3位「99%の誘拐」
4位「コンピュータの熱い罠 」

となりますが、どれも面白くよくこんなに駄作がなくかけるものだと尊敬します。
気軽に読める上質のサスペンスとしてこの作家作品はお薦めです。
まだ、4冊しか読んでおりませんが・・・
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by yururitositarou | 2006-04-09 02:36 |

容疑者Xの献身 文芸春秋刊

d0063706_1225381.jpg「容疑者Xの献身」東野圭吾著 読みました。
 
東野圭吾作品は初です。

元の旦那にしつこくされ終いには娘とともにその元旦那を殺害した女性、その隣に住んでいるさえない独身数学教師はその女性を愛しており知恵を絞ってかばう話です。

以前、「パラレルワールドラブストーリー」を読もうと思いましたが、挫折しております。

ミステリー1位、直木賞受賞など、なんでこれほどまでに評価が高いのかという興味を持って読みました。

一見純粋なミステリー(ミステリーと純文学の境界線はよくわかりませんが・・・)です。

しかし、斬新な驚きや衝撃的内容かというとそれほどでもないような気もしました。

でも、確かに面白いです。

読んで損はないと思いますし、感動します。

ラスト、主人公はこれでよかったのだろうかと考えてしまいます。

ハッピーエンドなのかそうでないのか・・・

純粋なミステリーとして書かれておりますが、謎解きよりも主人公の心の内に興味を持たせ人を愛するという事について考えさせてくれる奥が深い作品です。

しかし、主人公の性格は、ともするとどうしてそこまでというストーカー的な恐ろしさも感じられます。が、読後は心が温まる感じがいたします。

こういうなんとも言えない読後感を感じさせてくれる点でやはり凄い作家なのかもしれないと思い始めております。

で、以前挫折した「パラレルワールドラブストーリー」をリベンジ。

d0063706_1231848.jpg親友の恋人に恋をした主人公。

いつの間にやらその親友の恋人と同棲している状況とその恋人をどうにかして自分の物にしたいと悩む状況と違う生活が交互に描かれて、最後にはひとつの話としてまとまります。

これを読んで主人公の友人の友情と容疑者Xの主人公の愛情とで共通する空気を感じられました。

再度読みますと娯楽ミステリーとして結構楽しめました。

不思議な事にその時の年齢、気分、状態とうにより本も面白く感じたりつまらなく感じたりするものだと実感いたしました。

過去読んでつまらなかった本も今読むと面白く読めるかもしれません。
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by yururitositarou | 2006-04-09 01:40 |

「夜市」恒川光太郎著 角川書店 1200円

d0063706_2011240.jpg友人のMAX氏にすすめられ読んだのですが、一気に一日半で読んでしまいました。読む速度が遅い私がです。 去年末に読んだのですがなぜか今頃感想です。

で、どういう話かと言うとホラーというよりも幻想的な夢の世界。

子供の時にみた怖い夢のような世界が展開し懐かしいような感覚を味わえました。

タイトルの「夜市」の他に「風の古道」が収録されております。

「夜市」は第12回日本ホラー小説大賞を受賞。確か直木賞にも候補にあがっておりました。

夜市は人間界の裏側にある妖怪たちの世界の市です。

そこでは様々な物が売られておりますが、そこから抜け出すには何かを買わなければなりません。買うといっても石が何億もしたりととうてい買えるような物はないのですが、なんでも売っております。

主人公は小さい頃、弟と夜市に紛れ込んでしまい、出るに出られなくなり弟を人売りに売って野球の才能を手に入れ人間界に戻る事ができました。

人間界では弟は以前から存在しない世界となっております。

甲子園までいくほどの才能は手に入れましたが弟に対する罪悪感が出てきまして大学生になった頃、弟を取り戻しに再び夜市へ行く事にします。それも、知り合いの同級生の女の子を連れて。

果たして、どのような方法で弟を取り戻すのか、夜市から出るには弟を見つけ購入しなければなりません。
しかし、持参金は数万円。こんなもんで億単位で売買されている夜市にいって、弟とともに戻ってこれるのか。という話で、最後まで引き付けます。

読後も不思議な余韻が残る作品でした。

もうひとつの「風の古道」も捨てがたいです。

こちらもやはり人間界の裏側の世界に子供二人が入り込んでしまう話ですが、白昼の悪夢のような懐かし恐い世界が展開します。

入り込んだはいいがアクシデント続出で出るに出られない状態の中、その世界を旅する人間の若者と旅をします。

私としてはこちらの方が恐くてインパクトあったような気もします。

なんとなく喉が渇いてくるような気になる話です。

簡単に感想をあげると

独自の世界を味わえます。
懐かし恐い感覚を味わえます。
読みやすいのに文学的です。

ということでなかなか面白恐く、幻想的体験をする事ができました。

作者独自の世界が確立されております。
しかし、以前どこかで見たようなデジャブな世界で話の内容以外の部分で感じさせる不思議な感覚を味わえました。

調べつくした小説もいいのですが、こういう不思議な感覚を味あわせてくれる幻想文学もなかなかいいものです。


装丁:片岡忠彦と書いてありました。
金魚は出てこないですが、話の雰囲気が充分感じられる幻想的な静けさが漂ういい表紙だと思います。
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by yururitositarou | 2006-02-06 20:04 |

「虎よ、虎よ!」アルフレット・ベスター著 ハヤカワ文庫

以前読んでさほど面白いと思わなかったのですが、どうも気になり再読してみたらとても面白いと感じました。

それが今回読んだ「虎よ、虎よ!」です。

d0063706_3224931.jpgカバーイラスト・生瀬範義
となっております。
いかにもSF冒険物という感じです。

1956年に書かれた本ですが、全く古さは感じません。
逆に新しさを感じるから凄いです。
で、話は、25世紀を舞台とし、ジョウントという身体移動いわゆるテレポーテーションが発明された時代です。
そして、木星外惑星の住民と内惑星の住民は戦争を引き起こしております。

その時、火星と木星の間で破壊された輸送船「ノーマッド」の気密室に唯一生き残り、定期的に酸素ボンベを交換しに外に出る以外閉じこもって170日間生存し続けている男ガリバー・フォイルが、たまたま通りかかった船「ヴォーガ」にやっと助けられるのかと思いきや無視されるところから始まります。

その時、自分を見捨てた「ヴォーガ」に対する復讐心が燃え上がり、その復讐心のみで壊れた
「ノーマッド」を何とか動かし復讐の旅が始まります。

ところがいきなり火星木星間の小惑星帯にある野蛮な科学者集団の人工惑星に捕まり顔に虎の刺青をされてしまいます。
しかし、そんなことで復讐心の火は消えません。無理やり人工惑星の一部である宇宙船を動かし惑星から引き剥がして脱出。
地球に向かいます。
しかし、「ヴォーガ」を見つけ破壊しようとしたところを捕らえられてしまいます。
捕らえたほうは違う意味でこの主人公に興味を持ち始めます。
宇宙船「ノーマッド」に積まれていた莫大な量のプラチナと謎の物質パイアに興味を持ってその船のありかを聞き出そうとしますが、主人公はどんな拷問にも口を割らず、「ヴォーガ」に対する復讐心のみが心を収めております。

そして洞窟内の監獄へ送られる事に。

前半は主人公は短絡的に復讐心のみで突き進んで、しかも、船である「ヴォーガ」に対する復讐の事しか頭にない状態。しかし、行動は上手くいかず、逃げる事で精一杯の状態。

その監獄を若い女性と共に脱出し、「ヴォーガ」に対する復讐というよりもその乗組員に対する復讐を考えるべきだと教えられます。

そして、何とか宇宙船を確保し「ノーマッド」に詰まれた荷を取りに再び宇宙へ旅立ちます。

その復讐心はとてつもなく強く、その一直線さが気持ちいいです。

「ノーマッド」の荷を何とか回収できたと思いきや追っ手が追跡しており、荷は回収できたがパートナーの女性は追っ手に囲まれ荷をあきらめないと回収できないと判断したとたん、ジェット噴射で追っ手と女性もろとも吹き飛ばし脱出します。

何よりも復讐が最優先で荷は復讐にはなくてはならない資金なのです。

そして数年後、地球にサーカスの一団が派手に到着します。その団長は超大金持ちで調子のいい人気者であります。

実はこれが主人公の化けた姿で、いよいよ復讐に取り掛かるため戻ってきたのです。

顔の刺青はなくなり身体改造して一時的にとてつもないスピードで動く事が可能となっております。

中半は主人公が復讐すべき相手を探し回る過程が描かれます。
腐敗しきったローマのスペイン階段や世界のあちこちにジョウントして飛び回ります。

そして、復讐すべき相手を知った主人公は・・・

後半は復讐ではなく違う次元へ行ってしまいます。

ラストは2001年宇宙の旅のように終わります。
しかし、これは2001年宇宙の旅よりも10年以上にかかれております。

単純な話と思いきやラストは奥深く、理解するのが困難です。
描かれる世界は猥雑でイってしまっているようなところもチラホラ。

この世界はいったん引き込まれると病みつきになる気がいたします。

火星を精神的に支配しているサン・ミッシェルに住む70歳の子供や、外惑星から放たれたミサイルがニューヨークを火の海にしてその姿を赤外線しか見ることのできない女性の視覚描写の美しさ。等々・・・

普通じゃない世界が気味悪くも美しく描かれております。

文体も面白いです。
d0063706_4202154.jpg日本語訳の本ですが後半の数ページに写真のようなタイポグラフィーの嵐があります。
はまるとかなりはまる本です。
しかし、人によっては受け付けないと思います。

私がSFを読むにあたって参考になるのがハヤカワ文庫のSFハンドブックです。

d0063706_4323478.jpgもう10年以上前に買ったので現在あるかわからないですが、SF興味を持ったらこのハンドブックはお薦めです。有名作品の簡単な説明が数多く出ており参考になります。

オールタイムベストも紹介されており今回の「虎よ、虎よ!」は7位に入っております。










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1位の「夏への扉」は明るく気持ちよく読みやすく内容はバック・トゥー・ザ・フューチャーで作者はハインラインです。他には「人形つかい」を読みましたが難しい解釈等必要なく単純な娯楽作品として読める点で好感はもてます。いかにもアメリカ的という感じです。

2位の「幼年期の終わり」は「2001年宇宙の旅」のと同じ作者で私の1位でもあります。始め読みづらいですが、その迫力と想像を超えるスケール感は段々のめり込ませ、ラストはとてつもなく衝撃を受けました。現在は地球の幼年期で悪魔の姿をした宇宙の使者が巨大な円盤で都市上空に滞在し人類を次の段階へ導きます。なぜ悪魔の姿なのか?次の段階とは?読めばわかる様になっております。スピルバーグに映像化してほしいと常々思っております。
逆に「2001年宇宙の旅」の映画を観て理解できない場合は同時進行で書かれた本の2001年宇宙の旅を読むと解りやすく書かれております。

3位の「ファウンデーション」は読んでおりませんが、原作はアシモフで、映画「アイ・ロボット」の原作者でトレビアの泉のオープニングにいつも紹介されている人です。
他の作品を読んだ事ありますが、読みやすく引き込まれる話が多いです。はずれがなさそうです。

4位の「アルジャーノンに花束を」は超有名ですね。しかし、私は本は持っているけど未だに読んでおりません。確かに面白そうなのですが。

5位「火星年代記」は今一番読みたいSFです。昔ドラマをやっていたのをうっすらと覚えておりますが、今になって読みたい気持ちが強まっております。文体が美しいとの事。

6位の「デューン」も映画になっておりますが読んでおりません。

8位の「リングワールド」はスケール感が凄いです。だいぶ前に読んだのでほとんど忘れましたがそのとてつもないスケールの世界を冒険する面白い話でした。

9位「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」も「ブレードランナー」の原作として有名ですが読んでません。原作者ディックの他の作品は何冊か読んで面白いのが多いですが、難しくて解らないのもいくつかありますので作品によって好き嫌いが出てきそうです。

10位の「ソラリスの陽のもとに」は私のお気に入り映画の一つの「惑星ソラリス」の原作。これは映画のインパクトが強くあの映画の中の世界が好きなので本も読んだのですが少し忘れてしまっております。ほとんど映画と同じなのですが所々違っていたような。もう一度読み直してみようかとも思っております。映画はもう10回くらい見ております。始めは受け付けませんでしたが、あの映画ははまると本当にはまっていしまいます。

このベスト10は読んで外れはないと思います。

とこの外この本では様々なSF作品が紹介されておりますので、興味ある方はまずこの本を購入する事をお薦めします。
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by yururitositarou | 2005-12-31 11:12 |

「水中都市・デンドロカカリヤ」安部公房著・新潮文庫

安部公房著作は以前、「砂の女」と「他人の顔」を読んでおりますが、もう10年以上前なのでうろ覚えですが、両方とも社会に対して疎外感を持っているような感じがして独特の世界です。

現実逃避にはうってつけです。それと妙に主人公に対してどこか突き放したような感情移入されていないようなそれでいて、作家の感情が充分反映されているような不思議な感覚を味わえます。理解できたのか理解できていないのかもわからないです。

で、今回は「R62号の発明」がテレビで紹介されていて、面白そうと思い読んでみようかと本屋に行ったらなかったので
「水中都市・デンドロカカリヤ」を購入しました。

短編集です。

幕開けは「デンドロカカリヤ」でこれは、コモン君がデンドロカカリヤになった話です。

コモン君って?

”コモン君はコモン君さ~要するにコモン君でありさえすればいいんだよ”と説明してくれます。
そのコモン君がデンドロカカリヤになった過程を友人が口語的に聞かせてくれます。

わけがわからないって、そうさ、それでもいいじゃない。

でも、コモン君の話はいい方さ。ちゃんとコモン君がデンドロカカリヤになる過程が描かれていてわかりやすいよ。

それ以外の話はもっとわけがわからないだろうね。

私的に一番わかりやすいというかインパクトあったのが「闖入者」でした。

主人公の部屋にいきなり3世代一家(4世代だったかな)が入り込んで自分達の家のごとく住み込んでしまい、主人公はいいように扱われて理不尽な世界が展開します。

外に助けを求めても誰も助けてくれません。
もう救いがない状態で、ラストは悲惨な終わり方をします。

現実にあったら恐いですが、私のベストフェーバリット映画の一つでもある「ドクトル・ジバゴ」にも同じような場面があったのを思い出しました。

ロシアでは社会主義になるにあたって、私有財産は許されなくなり大きな部屋に住んでいた主人公一家の部屋に他人がどやどやと入ってきていつの間にか住んでしまって主人公一家は片隅の一部屋だけが残された状態になってしまいます。

恐ろしい事です。

逆に大豪邸などに暮らしている人を見ると部屋の一部を分けろと言いたい気持ちも判るような気もしますが・・・やはり、あかの他人と住を共にするのは苦痛であると思います。

で、その他、「ノアの箱舟」は旧約聖書の有名な話は実は・・・という話。
これもけっこう面白いです。

「鉄砲屋」は平和な未開発の島が、鉄砲のセールスマンの出現で上手く騙され戦争に突入していく話。

表題の「水中都市」はわけわからないです。

これは理解しようと思ってもそう簡単に理解できそうもないと思いまして、作者独自の感覚世界のようであるのでその世界観を味わうという楽しみ方をすればいいかもしれないです。
たまには通常と違う世界を体験してみるのもいいかもです。

ここに収められている短編よりも「砂の女」と「他人の顔」の方がわかりやすく描かれてはいると思いますので、未読の方はそちらから読んだ方がいいかもしれないと思わされましたが、個性はこちらの方が強く出ているようです。

評価のしようがない内容の本であります。

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カバー装画 安部真知となっており調べてみたら安部真知氏は安部公房氏の奥さんでした。
この絵も小説同様独特です。
なんだか夫婦そろって異才で凄いな(ある意味カッコイイ)と感じております。
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by yururitositarou | 2005-12-27 02:11 |

功名が辻 司馬遼太郎著 文春文庫

「功名が辻」読み終えました。
来年のNHK大河ドラマの原作です。

初代土佐藩主、山内一豊とその妻、千代が主役の痛快出世物語です。
司馬遼太郎作品は読みやすいものが多いですが、これも例に漏れず読みやすく、出世ものなので気持ちがいいです。
出世ものというと豊臣秀吉の太閤記が有名で司馬遼太郎も「新史太閤記」新潮文庫で書いており、これも面白いのですが、本としてはこの「功名が辻」の方が面白かったような印象です。

同じ出世ものでも微妙に違います。

山内一豊は信長、秀吉、家康と付き従って出世していきますが、どちらかというと人が良く、要領が悪いうえ、かけ引きを知らないような素朴な人間です。それゆえに、千代という賢い妻の言う事をよく聞いて、千代の言うとおりに動いて出世して最後には土佐一国という大大名になります。
その点、秀吉は自身が要領よく動き回る事によって出世していきます。秀吉の妻のねねは、大変魅力的ですが、夫の仕事に口出しするというよりは、精神的支えとして夫を助けていくような人という印象があります。

山内一豊の妻、千代は夫の仕事に口出ししますが、それもいやみなく夫をおだてて盛り上げてその気にさせるという点でやはり精神的にも支えになっております。

この物語は山内一豊というよりもその妻、千代が主役となって大活躍する話です。

賢いのですがいつまでも若く、かわいい女性として小説では描かれております。
司馬作品の中では一番女性が魅力的に描かれているのではと思います。

山内一豊の妻というと「馬」が有名です。
何をした人かよく知らなくてもこの話は物語となって今でも語り継がれております。
この話でもその過程が詳しく面白く描かれており、前半の見所の一つです。

ですが、これだけではなく後半の関が原にいたるまで千代が夫を手助けする話が続々と続きそれがことごとく当たるのです。
個人としては自ら着物を作っては町で似合いそうな娘を見つけては作った着物をあげてしまったり、日本初の展覧会を開いたというようなことが書かれており、まさにスーパーウーマンです。

結婚当初、夫に一国一城の主にする代わり、夫には生涯側室は持たないでと約束します。
まさにその通りになる展開で、夫の伊右衛門(一豊)は約束どおり側室を持たず、それが為、世継ぎもできないので、逆に千代が側室を持つようにと進めるのですが、もう、伊右衛門は千代以外の女を受け付けないようになってしまっております。
本当にここまで律儀な人だったのだろうかと驚きです。
ただ、例外がありますがそれは本を読んでください。

反対に秀吉は家臣の妻にまで手を出す有様でどうしようもない女たらしな分、この伊右衛門の律儀さが不思議に感じられます。

話は本に戻りますが、この夫婦の話以外にも面白い箇所がいくつかあります。
他の司馬作品でもたびたび出てくるのですが、大名仮装大会の話は面白いです。
ちょうど秀吉が朝鮮を占領するため軍隊を送って自らは今の佐賀県にある名護屋城におり、そこで国内にいる大名達を集めて、仮装大会を催す話なのですが、韓国の人の心を逆なでしそうな話ですが、これが面白いのです。
家康などはこういうことが大嫌いなので、いやいやでもしかたなくザル売りに変装して見物人の爆笑をさそいます。他にも有名大名が出てきて見物人の爆笑をさそいます。ただ、この本の主人公である伊右衛門はこの場にいなかったので、仮装しなくて済んでおります。

余談ですが、朝鮮で死闘が繰り広げられているのに、仮装大会など下らない事に高じている秀吉はどうしようもない奴ですが、そんな秀吉を韓国で人気のスマップの草薙君が演じたのは驚いた記憶があります。韓国から見ると大悪人である秀吉をなんで韓国で人気のある俳優に演じさせたのか、また演じたのか、それもそう問題にならなかった点など不思議でなりません。ただ、ドラマでは朝鮮の役は描かれておりませんでした。

この本の最後の方は土佐に入る話です。
この本で一番書き方が難しい箇所であります。
この地は元々、長宗我部氏の土地で長宗我部氏を追い出しての入国になりますから地侍達の激しい反発が待っております。
そこで山内一豊は家来のたてた作戦にのり、地侍のリーダー達を相撲大会と称してあつめ、騙して皆殺しにしてしまいます。
これが唯一、千代に相談しなかった行動です。
しかし、それを読者がなんとか納得する形で描いておりますが、その点で少し最後は寂しさが漂います。

この地侍達は後々、郷士として江戸時代の間、土佐藩侍よりも位が低い扱いを受け続けます。
郷士は日傘をさしてはいけないなど厳しい条件があります。
それが後々、郷士から武市半平太や坂本竜馬などが現れるという事になります。

よって、この本を読んだ後、「竜馬がゆく」文春文庫を読むと土佐藩の流れがわかるかもしれないです。超長編小説ですが読みやすく笑いも多々あるので長さを感じないです。読んでない方は読んでほしいです。

一方の追い出された長宗我部盛親のこの後は「城塞」新潮文庫で描かれており大阪の陣で真田幸村や後藤又兵衛、明石ジュアニーなどと共に大阪七将星(北斗の拳の五車星みたいです)となり家康相手に活躍します。
この「城塞」の後半の将星探しは面白く、戦闘スペクタクルは凄い迫力ですのでお薦めです。
映像化不可能かもしれないです。

山内一豊が死んだ後、千代は藩主を甥に譲り自らは京都で静かに暮らします。
そして、十数年後、夫と同じ年齢で楽しい人生だったとつぶやいて静かに息を引き取ります。

ラストの残虐シーンがあるにもかかわらず、読後感は爽やかな印象を受けました。
それは山内一豊と千代が死ぬまで仲良く青春しているからであると思います。

この夫をしてこの妻とまさに化学反応のような組み合わせの夫婦であると感じられました。
子供がいない分(一人生まれますが・・・)夫婦の間はいつまでも友達のように仲良くそれが読後感に懐かしさと寂しさもかもし出します。

NHKの大河ドラマでは仲間由紀江が千代をやりますが、本を読むと千代はもう少し肉付きがよくふくよかな印象です。しかし、トリックなどでみせた、ユーモアのある演技には期待できるかもしてません。
他にキャスト見てみると、
山内一豊…上川隆也はちょっといい男すぎかも、小説でも素朴で味のある二人の年上の家来に武田鉄矢と前田 吟という組み合わせは見ものかもしれないです。

楽しみです。

本としては漫画のように読みやすく戦国史の流れもわかりやすいのでお勧めです。

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表紙は長谷川信春「牧場図屏風」ということで、味わいがある絵です。
東京国立博物館蔵となっており、先日北斎展行ったついでに常設展を見ましたがこの絵は見つかりませんでした。どこかに出品しているのかもしれません。残念、ですが、常設展は結構面白いので歴史が好きな人は何度見ても面白いかもしれないです。
北斎展については次に書こうと思います。
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by yururitositarou | 2005-12-02 20:00 |