「あかね空」山本一力著、文春文庫。
読み終えました。 といっても数日前に読み終えましたのですが、いまだに強い感動は残っております。 これは傑作です。 お薦めします。 江戸時代の豆腐屋を二代に渡って描いております。 京都から来た豆腐職人が江戸で豆腐屋を開き、いろいろな人の手助けで徐々に大きくなっていく過程が、よく描かれており、その息子二人と娘一人が店を引き継ぐまでの話です。 時代小説というと読まず嫌いの人が多いかもしれません。 なんとなく退屈じゃないか。 地味じゃないか。 と私も始めはあまり興味が沸かなかったのですが、以前の会社をやめてからも付き合いのあるお客さんで、私よりもだいぶ年上の人なのですが、その方と本の話をした時に薦められたのがこの本でした。 以前から言っているように、私は遅読で本が溜まっているので、買ったのは半年前でしたが、やっと今になって読みました。 始めの数十ページは、まあ面白い話程度に読んでいたのですが、これが読み進めるうちに止まらなくなるほどの面白さでした。 まず、登場人物がどれも生き生きと描かれており、江戸時代に入り込んだような感覚になります。 主人公(永吉)が店を開くまでが出だしの話ですが、店を構える長屋の桶職人の娘(おふみ)がなにかと面倒を見てくれます。 永吉はどちらかというと図体はでかいのですが、ボーとしているような風貌で、助けずにおけないとおふみは思い手伝ううちに恋仲となって所帯を持ちます。 おふみは活発な性格で、その生き生きとした若い頃のおふみの描き方は読み進むうちに、懐かしさをかもしだします。 結婚して子供ができ、その過程で色々な不幸が襲い、若い頃のはつらつとした性格が徐々に失われていきます。そのために後半になると前半のはつらつと動き回るおふみの姿が懐かしく感じられるのです。 悲しい事がたくさん起こりますし、綺麗事だけでもありませんが、不思議と暗さはありません。 この話に面白さを味付けしてくれる登場人物達の一人に庄六という大きな豆腐屋の店主がおります。 この人物は物語全編にわたり登場しますが、ケチでずるがしこくスネ夫みたいな奴ですが、主人公の豆腐屋に対して色々と妨害工作をしかけてきます。 最後の方はこの庄六と両親が死んで残された三人兄弟が対決する場面になりますが、最後の最後に大逆転劇が待ち構えております(読者はあらかじめ情報を得ているので、水戸黄門の印籠がいつでるかとわくわくしながら読む事になります) 面白さの第二は次はどうなるのという展開が次から次へと展開していきます。 その書き方がやはり上手いのだとつくづく思いました。 第一部は主人公を中心に描かれておりますが、 第二部になると様々な人々に視線が移ります。 それが一つの円になって主人公の豆腐屋を取り囲みます。 あとがきに直木賞選考委員の感想が載せられていまして、井上ひさし氏の感想の中で、 その激しい気合がいくつかの欠点をきれいに消してしまってもいる。 と書かれておりましたが、私にはどこが欠点なのかわからないくらい完璧な仕上がりでした。 あえて、難をいうともう少し二代目がこれからどうなるかの話を読んでみたいというくらいです。 あかね色の空が、江戸の町に生きる人々の哀歓を美しく照らして、この上ない上質な江戸下町人情を展開する傑作小説です。 是非是非より多くの人に読んでほしいと思います。 ![]() 表紙について。 装画・歌川広重「名所江戸百景 品川すさき」 題字・日野原 牧 カバー・斉藤深雪 と記載があります。 広重は有名ですね。 東海道五十三次。 昔、永谷園のお茶漬けにカードがついてましてそれを集めたいと思った事もありました。 今見てもいいです。 広重、北斎は絵みる毎に画集ほしいなあと思います。 話は深川で品川から離れておりますが、イメージ的にはぴったりです。 すさきとは洲崎で州が長くなった所という意味みたいです。 題字もかっこいいです。 ジャケ買いして部屋に飾っておいても損はないと思います。 帯で本を読んでる女の人は誰だかわかりません。 ともあれ、せわしない現実を忘れゆったりとした江戸にタイムスリップするのは心地いいものです。
by yururitositarou
| 2005-08-29 01:05
| 本
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